「死ぬかもしれない」と思った日からそろそろ4年。

2011年02月08日/ その他

実は4年ほど前に「ギランバレー症候群(その中のフィッシャー症)」という難病にかかり、死の恐怖におそわれました。
その頃に「闘病記」としてパソコンに文書を残していたので、それを公開します。

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症状:
ギラン・バレー症候群の亜型、フィッシャー症候群の更に「眼の神経」に影響が出た状態。ものが二重に見える「複視」というもの。
複視以外では「脱力感・倦怠感」があった。例えば、午前中に脱力感があったため朝食後ベッドで眠るが、お昼に起きたときにはより一層疲れていた、など。

発症期間:
平成19年(2007年)4月20日~5月12日ごろまでの間。(約3週間)

投薬等:
治療方法も特効薬もないが、眼の神経に良いとされるビタミンB12を処方され、毎食後に服用するのみであった。

症状の進行と回復:
2007年4月20日、朝起きると右側を見るときに、ものが二重になって見える事(複視)に気が付く。
その後3日ぐらい経過するうちに左側や正面を見ても複視となり、10日ぐらいまで症状は悪化。
ピークを過ぎれば徐々に回復し、発症から約3週間で完治した。

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概要はこんな感じです。
もっとよく知りたい、という方は続きを読んでください。詳しく記述しました。(長文なのであしからず。)


■■■ 闘病記(詳細) ■■■

2007年4月19日(発症前日)
朝起きると喉に違和感がある。カラカラに乾いている感じで、喋ると声がかなりかすれている。尋常ではない。
「風邪を引いたのか?」とも思ったが、熱はなく、咳・くしゃみもない。鼻水はあるがアレルギー性鼻炎なのでいつものこと。
前日(18日)は夜遅くまで起きていたので、寝不足や疲労などで調子を崩したものだと考えた。
仕事もいつものように出勤し、特に問題なく過ごして帰宅した。
いつもどおり夕食を取り風呂に入り、夜は前日と同じように遅くまでインターネットを見ていた。
就寝は午前2時過ぎだったと思う。

2007年4月20日(発症当日)
喉は治っておらず、一段とひどくなった感じがした。
朝食を取って、新聞を読んで、歯を磨いて、ここまではいつもと変わらない。
歯磨きの後は、ひげを剃る。
鏡に向かい、正面を見ているときは問題なし。
顔を右に向けたとき、鏡を見る視線は左を見るが、これも問題なし。
逆に、顔を左に向けて右を見ると見え方がおかしい。何か見づらいのでうまく剃れない。。
手を止めて正面に向くと異常はない。
左右とも見比べてみると、右側を見るときが何かおかしい。
しかし、何がおかしいかはよく分からない。
前日遅くまで起きていた事もあり、「疲労がたまって疲れ眼にでもなったのだろう」と考えた。
そのまま出勤の準備をして、車に乗って道路に出ようとしたその時、右側を見ると「見えない!」
いや、もう一度良く見ると「ものが二重になって見えている。焦点があっていない」という事に初めて気が付いた。
「やっぱりおかしかった」
そう思いながらも、正面や左を見るときは普通にものが見えるので、大して気にもせず職場に向かった。
仕事中も右を見る必要があるならば、首や体全体を向ければよいので何の差し支えもなかった。
この日は、夜になっても症状に変化はなかった。
眼の焦点が合わないというのは生まれて初めての経験でもあったので、ネット上で「焦点が合わない」を検索してみた。
すると、眼科だけでなく精神科、脳内外科などにもヒットし、重いものは脳梗塞まで出てきた。
少し不安になり、翌日、病院に行くことにした。

2007年4月21日
喉も焦点も良くなってはいない。
午前中で済ませたいので、朝8時30分には家を出た。
出発して3分もしないうちに新たな異常に気付く。
「正面も焦点が合わない!」
ただ、落ち着いて観察してみると、正面の場合は遠くを見るときに焦点が合わないようだった。
更に、まばたきをしたり視線をそらしたりすると、どうにか焦点が合うこともあった。
病院について今までの経緯を話して(喉のほうも異常だったが)、まずは眼科で診てもらうことに。
眼科では眼圧の検査、焦点の検査(機械で片目ずつ測定)、視力検査を行うが特に異常なし。
次に、両目での焦点の検査を行い結果は「少しずれはあるが異常と言えるほどではない」という診断結果。
後は、眼科の先生と向き合い、先生はペンを持って上下・左右・斜めに動かし、そのペン先を眼だけで追いかけるという検査。
この検査も特に異常ではなかった。
結局この日は「原因不明」という結果に終わり、治療・投薬はなかった。
先生の話では、「一時的なものかも知れない。良くなる場合もあるので、しばらく様子を見て悪化するならまた来てください」と言われた。
それを聞いて「だんだん良くなっていくのだろう」と、かなり楽天的に考えてしまった。

2007年4月22日
朝起きて部屋中を見渡してみた。
昨日は「遠くの正面」も二重になっていたが、今は2メートルくらい離れた場所でも二重になっている。
明らかに症状は悪化している。
「なぜ?」
先生は「良くなるかも知れない」と言ったのであって、「良くなる」とは言っていなかった。
しかし、悪くなるにしても診察した翌日とは…。
すぐにでも病院に行きたかったが、今日は日曜日のため救急しかやっていない。
翌日は仕事を休んで病院に行こうと思った。
早く原因を調べて、適切な処置をしないと大変なことになるのでは?と不安が大きくなった。
この日の夜はなかなか寝付けず、ベッドの中で色んなことを考えていた。
ネットで調べたときの「脳梗塞」も気に掛かり、しまいには「近いうち死ぬのではないのか?」とまで考えてしまった。
病気や原因が「分からない」というのは、それだけで物凄い脅威になるのだと実感した。

2007年4月23日
昨日は2メートル先で二重になっていたものが、今は50センチでも離れていると二重になっている。
早速病院へ向かい、眼科で2回目の診察を受けた。
しかし、眼科では前回とまったく同じ内容の検査しかしない。検査結果も同じで異常はなかった。
診察したのは前回とは異なる先生で、「糖尿病など、内科的な病気から眼に来る場合もある」との事なので、内科も受診することに。
総合病院であったため、その日のうちに内科を案内され、受診した。
内科のほうでもペン先を眼で追いかける検査のほか、膝の皿を叩く腱反射、片足で直立、かかとと爪先をあわせながらの直進などを行うが、特に異常はない。
もう少し詳しく調べないと分からないとの事だったので、この日は検尿と採血を行い、翌日にはMRI検査を行うことになった。

2007年4月24日
朝、目覚めると「昨日より良くなっているのでは?」と訳もなく期待しながら周りを見渡すが、変わらず二重に見える。
左右の眼を交互に開いて見たりするが、虚しくなるだけであった。
午前中で病院に行って、昨日できなかったMRI検査を行った。
そして午後、内科での2回目の診察を行う。
昨日の検尿と採血では目立った異常はなく、午前中のMRIの結果でも脳には異常はなかった。(この時点で大きな不安材料の一つはなくなった。)
そして、先生の診断としては「ギラン・バレー症候群(フィッシャー症候群)のうちの軽い症状が出たと思われる」というもの。
この病気は、症状の幅も広く、それによって治る期間もまちまちで、特効薬もなければ治療法も確立されていないとの事であった。
最近も私に似た症例の患者さんを扱ったそうで、その方は2ヶ月から3ヶ月で完治したとの事。
2~3ヶ月…。
長い闘いになりそうだなと覚悟した。
物が二重に見える以外、健康面では問題はなく歩行も可能であるので、入院の必要はなく、少し不便ではあるが仕事もできる。
この日はビタミンB12を2週間分処方された。そして2週間後に様子を見るため、その時再び内科に来るようにとの事であった。
病院の帰りに、薬局に立ち寄って眼帯を購入した。眼帯で片方の眼を覆えば二重にはならない。
実は、両目を開けて車の運転は不可能なレベルであったので、片目をつぶって運転していた。
片目だけを開ける(つぶる)というのは、両目を開ける(つぶる)状態より疲れてしまう。
あと、片目だけを使い続けるのは視力が下がる事もあるらしく、左右交互に眼を使うようにと先生からアドバイスを受けた。
この日の夜は、病名が分かったのでネットで調べてみた。
ギラン・バレー症候群は先生が話していたように症状の幅が広い。
まばたきしかできないだの、人口呼吸器が必要だの重い症状はかなり深刻である。
自分の症状がかなり軽い事がわかり、難病ではあるがありがたい気持ちになった。

2007年4月25日
相変わらず二重に見える。
検査のために、昨日、一昨日と連続で仕事を休んでいたが、今日から仕事に復帰。
そう思っていたが、体がだるい。手足に脱力感がある。
病気のせいなのか分からないが、無理をせずに午前中は休むことにした。
取り敢えず朝食を取って、昨日もらったビタミンB12を飲んで、再びベッドで横になって休んだ。
12時前に起きたが、脱力感のほうはより一層強くなってしまった。仕方なく午後も引き続き休む事に。
今振り返ってみれば、この日から4~5日後までが病気のピークだったのではないかと思う。

2007年4月26日
眼帯をして出勤した。土日を挟んでいたので5連休後の出勤。

【4月26日から5月8日(病院での診察日)までの状況を以下にまとめる。】
眼のほうは、端っこを見る場合に眼球(若しくは眼の周囲)に頭痛のようなズキズキとした痛さがある。
日によって、正面を見たときに二重になる距離が変わる。
夜は割りと調子がいい(距離が長い)ように感じる。1メートルくらいは普通に見える。
朝の起床後や昼寝の後などは調子が悪く、頭も重い感じがする。
症状のピークは30センチくらいでも二重になっていた。その時はノートパソコンの画面までの距離で二重になっていた。

車の運転は、片目で見るため遠近感はつかみにくい。
しかし、対象物が近い場合、例えば前の車を見ている場合は、その前の車の大きさで距離を判断している。
つまり、遠近感ではなく「危機感」で前の車との車間距離を取っているという感じ。
細い道を通る場合などは、両目で見ていたときよりも運転しづらい。普段より大分狭く感じてしまう。
20分程度の運転なら特に問題はないが、約1時間の運転は、途中で10分程度の休憩を入れても疲労を感じた。

「眼の使い方」などを考え、いろいろ試してみた。
正面を見て2メートルくらいで二重に見えるときに、一旦、手元を見て焦点を合わせ、再び遠くを見る。すると5~10秒は正常な焦点を維持できた。
しかし、一度焦点がずれる始めてくると、頑張って(力んで?)焦点を合わせようと思ってもずれていく一方で、再び手元を見ない限り合わない。
焦点がずれたときに、手元を見るのではなく、見ている場所はそのままで数回まばたきをしてみたが、焦点は合わない。
今度はまばたきではなく、数秒眼をつぶって再び眼を開けると焦点が合った。秒数を減らすと(見ている距離も関係すると思うが)焦点は合わない。
一番確実で効果的に焦点が合う方法は、両方の眼の外側(こめかみ)の皮膚を外側に軽く指で引っ張る(あっかんべーの横方向)。
なぜこの方法で焦点が合うのかは分からない。また、焦点が合っているときにこれをやると二重に見える。

眼帯の工夫について。
薬局で購入した眼帯は通気性を確保するためと思うが、小さな穴がいくつもある。市販のものはほとんどがそうなっているはず。
この小さな穴が厄介者で、眼帯をしていても両目を開けると物が二重に見えてしまう。
そこで、紙を眼帯の大きさに合わせて切り取り、セロハンテープで貼り付けて穴を埋めて使用した。これで焦点のほうはクリアした。
ずっと片目だけを使うと視力が下がると言われたので、時折、押さえている眼を交代するのだが、メガネもかけているので結構わずらわしい。
そこで、眼帯をしないで、メガネのレンズを紙で覆うようにした。

紙で円筒形を作り、それをぺしゃんこにつぶした状態にして、その中にレンズを通してレンズの表も裏も紙で覆われる。
中は空洞なので、この紙を左右に移動すれば眼を交互に使用できる。

紙なので何度か移動を繰り返すとボロボロになってしまう。
次は布を使って、切り込みのところは糸で縫い合わせて作った。
布なら柔軟に曲がるので、メガネの耳のところから通すことができる。もちろん紙より丈夫である。
しかし、この布は3日ぐらいしか役にたたなかった。この布を作ってから、症状が快方していったからだ。



2007年5月8日(病院で最後の診察)
この日は先生が「様子をみるため」に予約していた日(前回の診察から2週間後)。
実はこの2日くらい前から、正面を見る分には二重にならなくなっていた。
更に診察当日では、右を見るときでも角度の深いところまでいかないと二重にはならなかった。
その旨、先生に話すと「もうほとんど治ってますね。思った以上に早くて良かったですね」と喜んでいた。
まだ完治というわけではないので、引き続きビタミンB12をもらい、もし症状が悪くなる事があればすぐに病院に来るように言われた。

週末(2007年5月12日)ごろには、右側を見ても二重にはなっていなかった。
結果、約3週間で完治となった。
発症から10日ぐらいは症状が悪化していったので、かなり不安になったが、ピークを過ぎて徐々に回復すると安心してきた。
2~3ヶ月と聞かされていただけに、早く治って非常に良かったと思う。


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以上が、当時作成した闘病記です。
「生きている」「健康」というだけで、本当はすごく感謝すべきことなのでしょう。
日々の「ありがたみ」を忘れた頃に、この記事を読み返そうと思います。




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Posted by 瀬長修 at 23:29│Comments(9)
この記事へのコメント
はじめまして。
日々の「ありがたみ」…
そうですね、、忘れがちになります。。
私も、忘れないようにしないと。

ありがとうございました♪
Posted by 優☆ at 2011年02月25日 19:39
優☆ さん

コメントありがとうございます。
今朝の沖縄タイムスに、ベトナム(アフガニスタン?)で両足を地雷で失った子供の記事が載っていました。
当初は暗く落ち込んでいたようですが、同じ境遇の人がいることを知り、その事が励みになって、明るく前向きに生きられるようになった、との内容でした。

「同じ境遇の人」が身近にいれば、強力な支えになるのでしょう。
障害や難病にかかっても、前向きに生きられたら素晴らしいと思います。
Posted by アナログアナログ at 2011年02月26日 22:48
こんにちわ、私も2001年にフィッシャー症候群にかかりました。珍しい病気で診断を受けるまでに2日、4件の病院で診察を受けました。
わたしの仕事は看護師です。産休明けに直ぐに職場に復帰したところでした。昨日までは病気の人を看護する立場から看てもらう立場に。

症状はきつく死んでしまうのかと思ったほどでした。辛くてしんどくて入院当初の記憶はあまりないです。
当時23歳。結婚1年目て産後4ヶ月。夫は1人で子供を育てていく覚悟までしたそうです。
何とか3ヶ月ほどで働けるまでに回復。あれから、11年ほどになります。もう1人子供に恵まれ夫と4人何とか幸せに暮らせています。
あの病気をしたことで病気の辛さ患者の気持を学びました。神様が与えてくれた学びと思うようにしています。しかし二度とかかりたくないですね。今でも風邪をひくと思い出してしまいます。
Posted by もりこ at 2012年02月26日 02:47
もりこ さん

ご訪問&コメント、ありがとうございます。
珍しい病気や難病など、特効薬や治療法方が確立されてなくて、闘病中はとても心配になりますよね。
それが3ヶ月も続いたというのは、大変だったかと思います。
ただ、こういう大病を患うことで、私は価値観を大きく変えることができたと思います。
そういう「切っ掛け」になったのは、自分にとってプラスになったなぁと思いました。
さすがに二度とかかりたくはありませんが。
Posted by 瀬長修瀬長修 at 2012年02月27日 22:24
今現在、全く同じ症状です。軽いフィッシャーで左目がらわるく、目だけが複視です。2週間たちましたが少しだけよくなってはいますがまだ二重にみえます。
ある時ぱっと元に戻ったのか徐々に治ったのか良かったら教えてください。
Posted by さやか at 2014年12月02日 21:56
さやかさん

こんばんは。ご訪問&コメント、ありがとうございます。
ご質問の回答ですが、「複視」は徐々に良くなりました。
お医者さんからは治るのに2~3ヶ月かかるかも知れないと言われていたので、回復には個人差があるのかも知れません。
Posted by 瀬長修瀬長修 at 2014年12月04日 00:09
ありがとうございます。毎日治らなかったらどうしようと不安なのでプログに励まされました。三週間で戻ったなんて羨ましいです。
がんばりますね。今日で2週間と1日です。
早く治ってほしいです。
Posted by さやか at 2014年12月04日 18:48
初めましてけんじと申します。

突然の発症で一気に生活が激変し大変でしたね。完治までの苦労は想像しただけで不安と恐怖を感じました。

でも瀬長さんの生きる力を前向きに感じるブログはとても良いと思います。
少しでも同じような経験をしている人達の力になれるブログを書き続けて下さい。
Posted by けんじくんけんじくん at 2018年08月03日 16:35
けんじさん、ご訪問&コメントありがとうございます!
ある意味、大病を患うことで、大きな学びにもなったかな思います。
病気ってマイナスに捉えがちですが、いい経験に(学びに)なったと、プラス思考で捉えるなら、逆境にもめげずに頑張れるんじゃないかなと思います。
ギランバレーやフィッシャー症候群になった人が、少しでも元気を取り戻せたらいいなと思います。
Posted by 瀬長修瀬長修 at 2018年08月03日 23:35
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